1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 21:10:44.42 ID:bWrcWJ2t0
カズマ「ごちそうさん」 

めぐみん「はい、お粗末さまでした」 

始まりの街、アクセルは今日も平和である。 
朝起きて、めぐみんが作った朝食に舌鼓を打ち、食後の一服。午前の紅茶は実に優雅だ。 
もっとも、朝食とは言ったものの既に早朝とは言えず、だいぶ陽は昇っている。普段通りだ。 

屋敷にダクネスとアクアの姿はなく、めぐみんに尋ねると2人は外出したらしい。 
ダクネスは領主の仕事と称して、街の子供たちと戯れ、アクアは金がないと嘆き、街の総菜屋でバイトに勤しんでいるとのこと。 
これが特筆すべき点の全くない、日常である。 

この時間に2人が屋敷に居ないのはいつものことであり、同時にめぐみんと2人きりになれる数少ない機会でもあった。大切にしなければ。 

カズマ「なあ、めぐみん」 

めぐみん「なんですか?」 

カズマ「良く晴れていい天気だし、こんな日は俺と一緒に同じベッドで二度寝しないか?」 

めぐみん「文脈がおかしいじゃないですか! 良く晴れていい天気である必要性が皆無ですよ!」 

めぐみんの主張はもっともだった。 
ついでに言うと、二度寝する気は微塵もない。 
同じベッドで一緒に横になりたかっただけだ。




2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 21:13:12.25 ID:bWrcWJ2t0
めぐみん「本当にこの男は、自らの欲望を隠そうともしませんね。いつか本気で襲われる予感をひしひしと感じますよ。自重してください」 

カズマ「お前がいつも思わせぶりな言動をして、俺を悶々とさせるからだろ。責任取れよ」 

めぐみん「そ、それについては本当に申し訳なく思っています。来たるべき時が来たら、カズマに全てを捧げるので今暫く待ってください。な、何ですかその目は。私は本気ですよ!」 

来たるべき時が来たら、ねぇ。 
いつになるのやら。本当に訪れるのか疑問だ。 
なにせ俺たちの稼業は冒険者である。 
明日、どうなるとも知れない身同士。 
そんな悠長なことを言ってる余裕があるのか。 

カズマ「もしも俺が明日死んだらどうすんだ」 

めぐみん「えっ? アクアがリザレクションをかけて生き返らせるに決まっているではありませんか。それで何度蘇ったと思ってるんですか」 

うん、大丈夫そうだね。 
でも、もうちょっとさ、こう……ね? 
俺の命を大切にして欲しいと言うか。 
ほら、一応気の置けない仲なんだしさ。 

めぐみん「言っておきますが、生き返れるからといってほいほい死なないでくださいね? たとえ仮初めの死とはいえ、悲しいことには変わりませんし、心配で胸が張り裂けそうになりますから……って、おい。私の胸を見て何か言いたげだな。言ってみろ、聞こうじゃないかっ!!」 

張り裂けるほど成長して欲しいものである。

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 21:15:31.91 ID:bWrcWJ2t0
それから暫くまったり過ごし、時刻は昼近く。 
そろそろ、めぐみんの日課の時間だ。 
昼食前に爆裂魔法をぶっ放して、更地でサンドウィッチを共に食べるのが近頃の習慣だった。 

めぐみん「少し席を外しますね」 

カズマ「うんこか?」 

日課へ出かける前に、めぐみんは席を外す。 
そのタイミングで問いを投げかけてみた。 
特に意味はない。思いつきを口にしただけだ。 

めぐみん「……カズマ」 

カズマ「ん? どうした? さっさと行けよ」 

めぐみん「先程の発言を取り消してください」 

何をおかしなことを。 
とうとう言語中枢にまで異常を来したのか? 
めぐみんは上げた腰を再び据えて、半眼でこちらを睨んでいる。どうやら怒っているらしい。 
俺は呆れながら、理由を尋ねてみた。 

カズマ「何でだよ、言ってみろ」 

めぐみん「不適切な発言だからです」 

は、不適切ときたもんだ。 
へそで茶が沸いちゃうね。 
適切な発言とは何か、誰か俺に教えてくれよ。 

カズマ「いいから、早くしないと漏れるぞ」

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 21:17:35.66 ID:bWrcWJ2t0
めぐみん「いい加減にしてください!」 

急に声を荒げるめぐみん。何この子、怖い。 

カズマ「いい加減に漏れそうなのはめぐみんの方だろ。さっさとトイレに行ってこい」 

めぐみん「紅魔族はトイレなんかしません!」 

どこかで聞いたような台詞だ。 
たしか、言ったそばからポルターガイストの絡んだトイレ騒動があった気がするが、今はとやかく言うまい。とりあえず、言質は取った。 

カズマ「なら、とっとと日課を済ませようぜ」 

席から立ち上がり、玄関へと向かう。 
既にお互いに寝巻きから普段着に着替え終えていて、めぐみんの愛用の杖は玄関口の傘立てに置かれている。あとはサンドウィッチの入ったバスケットを持てば準備完了だ。問題はない。 

しかし。 

めぐみん「カ、カズマ、そう急ぐ必要はないではありませんか。もう少しのんびりしましょう。ほら、お茶のおかわりも淹れますし」 

ソファから立ち上がろうとしないめぐみん。 
おかしい。どうにも奇妙だ。らしくない。 
いつもならば、率先して先陣を切るのに。 

やはり、めぐみんはうんこがしたいとみた。 

カズマ「なら、もう少しだけゆっくりするか」



5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 21:23:10.21 ID:bWrcWJ2t0
ひとまず、様子を見ることにした。 
茶を啜りながら、めぐみんの動向を伺う。 
青くなったり、安堵したり、めまぐるしい。 
意を決して立ち上がり、俺と目が合う。 

カズマ「どこに行くんだ?」 

めぐみん「ちょっと杖を取りに……」 

カズマ「杖なら玄関口の傘立てにあるだろ」 

めぐみん「あはは、そ、そうでしたね。私としたことがついうっかりしてました。てへっ」 

何が、てへっ、だ。 
いくら可愛くても俺の目は誤魔化されんぞ。 
最近、自分の可愛さを自覚してきたのか、それを平気で武器として利用し始めためぐみん。 
これは良くない傾向である。断じて許さん。 

俺は真の男女平等を掲げる男。 

可愛かろうが、可愛くなかろうが、関係ない。 
とことん、自分の発言には責任を取らせる。 
その為ならば、心を鬼にすることも辞さない。 

カズマ「スティール!」 

めぐみん「あっ!」 

便利な窃盗魔法を唱えて、装備を剥ぎ取る。 
俺の手のひらには目当ての代物が。黒パンだ。 
これが誰のパンツなのかは言うまでもない。 

めぐみんの最後の盾は、剥奪した。

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 21:25:54.55 ID:bWrcWJ2t0
めぐみん「な、何をするんですかっ!?」 

カズマ「魔法の訓練だ。いざとなった時に感覚が鈍ってしまったら大変だからな」 

めぐみん「だからって何も今やらなくてもいいではありませんか! パンツ返してください!」 

カズマ「まあ、待て。焦るなよ」 

喚くめぐみんを片手で制して。 
もう片方の手に握りしめためぐみんのパンツをおもむろに鼻に押し当てて、深呼吸をする。 

カズマ「すぅぅぅーっ! はぁぁぁーっ! 」 

めぐみん「ひ、人のパンツを嗅がないでください! 人間として最低な振る舞いですよっ!?」 

カズマ「なんだ、まだ漏らしてないのか」 

めぐみん「当たり前じゃないですか! 何を期待してるんですか! やめてくださいよ本当に!」 

めぐみんのパンツは臭くなかった。 
とっても良い匂いがした。ムラムラする。 
あとで有効に活用させて貰おう。 
俺は懐の奥深くに、パンツを仕舞った。 

めぐみん「なんで当たり前のように仕舞ってるんですか!? 早く返してくださいよっ!!」 

カズマ「パンツの1枚や2枚ケチケチすんな」 

めぐみん「なぜ私がケチ臭いみたいになっているんですか!? 普段から3枚も4枚も穿いているわけじゃないんですよ! 1枚こっきりのパンツを取られたら、あとは何もないんですから!!」 

よほどの寒がりでもあるまいし、当たり前だ。 
普段から3枚も4枚も穿いてる奴などいない。 
つまり、今のめぐみんは完全にノーパンだ。 

ノーパンのまま、うんこを我慢して貰おう。

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 21:28:25.73 ID:bWrcWJ2t0
めぐみん「うぅ……カズマぁ」 

カズマ「なんだい、めぐみん?」 

あれから30分程が経過した。 
囚われのパンツを奪還せんと躍起になっていためぐみんだったが、俺の鉄壁の守りを崩せず、腹を抱えてソファの上でうずくまっている。 
どうやら、力尽きたようだ。無理もない。 
便意を堪えての激しい運動など無謀の極みだ。 

自分の首を自分で絞めてしまっためぐみんは、最後のお願いとばかりに泣き落としにかかる。 

めぐみん「私たちは仲間ではないですか」 

カズマ「うん、そうだね」 

めぐみん「ならば、助け合うべきです」 

カズマ「うん、そうかも知れないね」 

めぐみん「そこで折り入ってご相談が」 

カズマ「おや、なんだい?」 

めぐみん「私をトイレに運んでください」 

カズマ「ふむ、それはどうしてだい?」 

めぐみん「ちょっとトイレに用があるのです」 

カズマ「ほう、それはどんな用事なのかな?」 

めぐみん「カズマ! もう許してくださいよ!」 

駄目だ。絶対に許さん。 
やるなら、徹底的に、だ。 
ここで情に流されては全てが水の泡。 
自分の言ったことはちゃんと守らせる。 
仲間だからこそ、甘やかすつもりはない。 
俺にはパーティリーダーとしての責任がある。 
こうした些細なことからパーティが崩壊する。 

故に、どんなに懇願されたとしても、俺は。 

めぐみん「ぐすっ……カズマぁ……」 

カズマ「な、泣くなよ、めぐみん!」

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 21:31:47.80 ID:bWrcWJ2t0
めぐみん「ぐすんっ……私はもう駄目です」 

カズマ「だからもう泣くなって! 絶対に俺がなんとかしてやるから安心しろ! なっ?」 

めぐみん「本当ですか? 運んでくれますか?」 

カズマ「どこにだって運んでやるよ! お前が爆裂魔法を使って力尽きた時と同じようにな!」 

めぐみん「ありがとうございます! なんだかんだ言っても、カズマは優しいし、頼りになりますね。そういうところが、私は好きですよ」 

あれっ? おかしいな。 
さっきまで泣きじゃくっていたのに笑顔だ。 
まあ、満更でもない。好きとか言われたし。 
いやいや、そうじゃないだろ。しっかりしろ。 
さっきまでの硬派な俺はどこにいった? 

ここで許して本当にいいと思っているのか! 

めぐみん「カズマカズマ」 

カズマ「ん? 」 

めぐみん「抱っこしてください」 

カズマ「ああ、もちろんさ」 

あっれぇーっ!? 
何言っちゃってるんだ、この口は!? 
なにが、もちろんさ、だよ! 俺の馬鹿!! 

とはいえ、この辺りが潮時だろう。 
本当に漏らされては困る。そんな趣味はない。 
先程の会話で、何となく察したこともある。 

めぐみんは爆裂魔法を使うと、力尽きる。 
全身に力が入らなくなって、歩行も困難だ。 
だからこそ、行く前に用を足すのだろう。 

ならば、さっさと済ませることにしよう。



9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 21:38:09.31 ID:bWrcWJ2t0
カズマ「ほら、掴まれ」 

めぐみん「すみません、抱き方に要望が」 

カズマ「何だよ、こんな時に」 

どうやら便意が限界で、もはや自力では歩けないらしい。本当に手間のかかるロリっ子だ。 
そんなめぐみんの腕を取ってソファから引き上げようとすると、何やら注文を付けられた。 

めぐみん「普通の抱き方では無理です」 

カズマ「どういうことだよ。まさか、お姫様抱っことか抜かすんじゃないだろうな?」 

調子に乗っているならば、容赦はしない。 
バインドの魔法で縛って簀巻きにしてやる。 
その後、どうなろうが知ったこっちゃない。 

めぐみん「ち、違うのです。たしかにお姫様抱っこは魅力的ですが、この状況では不可能です。抱かれた瞬間に全てが無に帰します!!」 

なるほど、うんこが出ちまうか。 
たしかに、普通の抱き方では無理そうだ。 
俺はめぼしい他の選択肢を挙げてみる。 

カズマ「じゃあ、おんぶとか?」 

めぐみん「余計に危険です。なるべく、お腹を圧迫しないようにしてください」 

んな無茶な。 
バインドで縛って引きずってもいいが、それでは恐らく納得しないだろう。絶対に怒る。 
どうしたものかと逡巡しているとめぐみんが。 

めぐみん「あの、私から提案があるのですが」 

カズマ「なんか良い方法でも思いついたか?」 

めぐみん「か、肩車……などは、どうですか?」 

おいおい、聞いたか? 
言うに事欠いて、『肩車』ときたもんだ。 
なんて無理難題を。正気なのかこの小娘は。 
それが色々と不味いことは目に見えていた。

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 21:41:06.84 ID:bWrcWJ2t0
カズマ「本気か?」 

めぐみん「この場合、それしかないかと」 

カズマ「でも、お前は今、ノー……」 

めぐみん「言わないでください! だいたい、それはカズマのせいではないですか! それを言うならパンツを返してくださいよ! 今すぐに!」 

パンツを返すつもりはない。 
やむを得ないので、ノーパンでいこう。 
それは規定事項として、次なる問題は。 

カズマ「万が一があったらどうすんだ」 

そう、それこそが最大の懸案事項だった。 
肩車なんぞして、もしもめぐみんが漏らせば。 
俺はおしまいだ。たぶん、転生は不可能。 
何故ならば、蘇ることを拒むからだ。俺が。 
汚れた肉体に戻る気はない。絶対に、だ。 
せいぜいあの世でエリス様と仲良く暮らすさ。 

なんて割り切れる程、この世に未練がないわけでもなく、もうしばらくは生きていたかった。 

めぐみん「大丈夫ですよ、カズマ」 

カズマ「その自信はどこからくるんだ?」 

めぐみん「信じてください、仲間を」 

カズマ「信じる要素をオラに分けてくれ」 

やけに爽やかな笑みを浮かべるめぐみん。 
正直、かなり胡散臭い。嘘の匂いがするぜ。 
こめかみに浮かぶ冷や汗が、余裕のなさを物語っている。たぶん、そろそろ限界とみた。

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 21:43:26.68 ID:bWrcWJ2t0
めぐみん「さあ、カズマ。跪いてください!」 

カズマ「やっぱり嫌だ! そこで漏らせよ!!」 

めぐみん「な、なんてことを言うんですか! さっきまでのナイスガイはどこに行ったのですか!? 頼りになるところを見せてください!」 

ナイスガイは死んだ。 
その代わりに俺は生き残る。 
せっかくこっちでの生活も軌道に乗ってきた矢先、糞塗れになってぽっくりなんて御免だ。 

あばよ、めぐみん。達者でな。 

めぐみん「ま、待ってください!」 

せめてもの情けとして、屋敷から離れ、これから漏らすであろうめぐみんの醜態を目撃しないように玄関へと向かうと、呼び止められた。 

カズマ「もう話すことなんてないだろ」 

めぐみん「ええ、ですから見てください!」 

見ろと言われたから、見た。 
ソファの上で立ち上がっためぐみんは、スカートをギリギリまで捲ってノーパンアピール。 
これには俺もはっとしたね。我に返ったよ。 
そういや、めぐみんはノーパンだったっけ。 

俺は、ノーパンから逃げないことを、決めた。

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 21:47:32.54 ID:bWrcWJ2t0
カズマ「ささ、遠慮せずに早く乗れよ!」 

めぐみん「本当に欲望に忠実な男ですね。まあ、女として生まれた以上、魅力を感じて貰えるのは嬉しいのですが……はあ。失礼します」 

不平不満を連ねて、ため息をひとつ吐き。 
気を利かせてソファの前で背を向けて跪く俺の肩に、めぐみんが乗った。無論、ノーパンだ。 
つまりどういうことかと言うと、ノーパンのめぐみんのノーパンな部分が、俺のうなじあたりにノーパンであることを教えてくれているわけで、改めて、本当にノーパンであると悟った。 

カズマ「本当にノーパンなんだな」 

めぐみん「口に出さないでくださいよ! 恥ずかしくてどうにかなりそうなんですから!!」 

カズマ「おほっ」 

俺の不埒な発言に抗議するように。 
ぎゅっと、ふとももで顔を挟まれた。 
正直、たまりません。思わず笑みが漏れた。 
我ながらいやらしい笑い方だったと思う。 
すると、めぐみんの嗜虐スイッチが入り。 

めぐみん「なんですか、この男は。普段からロリっ子扱いしている私のふとももに欲情してるんですか? 本当に困った男ですね。ほらほら、カズマ、もっと強く挟んであげましょうか?」 

馬鹿な女だ。 
黙って殊勝にしていればいいものを。 
調子に乗ることは、断じて許さない。 
俺が真の男女平等を掲げる男と知っての狼藉。 
いかに仲間と言えども、絶対に見過ごせない。 
その身でたっぷりと、罪を償わせてやろう。 

カズマ「クリエイト・ウォーター!」



13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 21:51:06.67 ID:bWrcWJ2t0
めぐみん「はぅあっ!?」 

素っ頓狂な悲鳴をあげるめぐみん。 
俺の魔法に仰天した様子。それもその筈。 
今の魔法で、指先から水を生み出した。 
では、その水はどこへ? 答えは簡単だ。 

カズマ「どうだ、めぐみん。水浣腸の威力は」 

俺の人差し指は、首筋に向けられていた。 
丁度、めぐみんが腰掛けている部分である。 
要するに、めぐみんの尻に、指をぶち込んだ。 
その上での、放水だ。故に、水浣腸と称した。 

めぐみん「あ、ああ、あなたって人は……!」 

カズマ「俺は佐藤和真。初級魔法を極めし者」 

紅魔族っぽく名乗りを挙げてみたところで、全く様にはならない。しかし、効果は絶大だ。 
水鉄砲程度の威力でも、今のめぐみんには致命的な一撃となり得る。苦痛に喘ぎ、懺悔しろ。 

めぐみん「いまの状況がわかってますか!?」 

カズマ「あっ」 

そう言えば、そうだった。 
水浣腸でわからせたのはいいものの。 
今現在、俺はめぐみんを絶賛肩車中。 
今にも爆発寸前の爆弾を肩に乗せていた。 

ニトログリセリンは大変不安定な物質である。 

ほんの少しの衝撃で、科学反応が誘発される。 
そんなただでさえ取り扱い注意の爆発物に対し余計な刺激を与えればどうなるか。明白だ。 

めぐみん「……黒より黒く、闇より暗き漆黒に、我が深紅の混交を望みたもう」 

頭上から、不穏な呪詛が、紡がれる。

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 21:53:21.68 ID:bWrcWJ2t0
カズマ「め、めぐみん……?」 

めぐみん「覚醒の時来たれり」 

覚醒すんな!? 

カズマ「めぐみん、ちょっとタンマ!」 

めぐみん「無謬の境界に堕ちし理、無行の歪みとなりて現出せよ!」 

不味い不味い不味い! 
視界がぐにゃあっと歪む。 
どうしてこうなった? 誰の責任だ? 
俺か? 俺なのか? 俺が悪いってのか!? 
だったら謝るから! 土下座でもなんでもするから頼むから待ってくれよお願いしますから!! 

カズマ「死にだぐないよぉ……!」 

めぐみん「踊れ、踊れ、踊れ」 

カズマ「踊りまずがらぁ……!」 

めぐみん「我が力の奔流に望むは崩壊なり、並ぶ者なき崩壊なり」 

わけもわからずその場で阿波踊りをする俺。 
しかし、無情にも破滅の刻は近づいていた。 
世界がガラガラと崩壊していく音が聞こえた。

15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 22:00:12.04 ID:bWrcWJ2t0
めぐみん「万象等しく灰燼に帰し、深淵より来たれ!」 

振り解こうにも、ふとももでガッチリ顔を挟まれているので、逃れることは出来ない。 
もがくのをやめた俺は既に灰と化していた。 
あーとか、うーとか言いながら息をしている。 
それもすぐに終わる。物言わぬ彫像と化す。 
さようなら、世界。ありがとう、世界。 

この素晴らしい世界に祝福を! 

めぐみん「これが人類最大の威力の攻撃手段! これこそが、最強の攻撃魔法っ!!」 

そりゃあ、最強だろう。 
人体の構造上、もっとも忌むべき生理現象だ。 
生まれながらに忌避し、禁忌とすべき脱糞。 
それが今この瞬間、俺の肩にぶち撒けられる。 

カズマ「やだやだ! やだよぅもうやだっ!!」 

最期の最期で駄々を捏ねるしか出来ない。 
それが俺の恥の多い生涯を物語っていた。 
お父さん、お母さん、ごめんなさい。 
あなたの息子は異世界で糞まみれになります。 

めぐみん「エクスプロォォォォォジョンッ!」 

びちびちびちびちびちびちびちびちッ!!!! 

なんか、やたら水気が多かった。 
なんたって水浣腸したしな、ははっ。 
下痢便になって当然だよな。馬鹿だなぁ。 

本当に馬鹿だよ……俺は。

16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 22:04:16.79 ID:bWrcWJ2t0
バニル「邪魔するぞ小僧! ……おや?」 

めぐみんが漏らした、その瞬間。 
ガチャリと開け放たれた玄関の扉。 
我が家に来訪したのはバニルだった。 
たしか、地獄の公爵で全てを見通す悪魔。 
たまに家にやってきて、ウィズが仕入れた不良品を押し売りしたり、俺の発明を買い取ったりしている。それにしても、間が悪い登場だ。 

いや、そのおかげで、他界せずに済んだけど。 

バニル「ふむふむ、なるほど。ああ、何も言わずともよい。全てを見通すこのバニルが見透かしてしんぜよう……ほう! 紅魔の娘が! 腹を下して! なんと水を尻に! それでこの惨状に!」 

羞恥心なんて、もう感じないと思っていた。 
それなのに、自らの振る舞いを第三者に指摘されると、顔から火が出そうになった。恥ずい。 
めぐみんも同じ気持ちらしく、もじもじとふとももで俺の顔を挟んできた。気持ちいい。 

バニル「フハッ!」 

全てを察した悪魔が、愉悦を漏らす。 

バニル「フハハハハハハハハハハッ!!!!」 

耳触りな哄笑が屋敷中に響き渡る。 
もしかしたら、アクセル中に響いたかもな。 
それだけのことを、しでかしたと実感する。 
盛大に嗤われても俺たちは何も言えなかった。



17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 22:07:25.44 ID:bWrcWJ2t0
バニル「フハッーハッーハッーハッーハッ!」 

まるで過呼吸のような笑い声。 
無論、悪魔に呼吸は必要ないとは思うが。 
人の尊厳を失った俺たちの胸に火が灯る。 

めぐみん「い、いくら何でも笑いすぎです!」 

カズマ「そうだそうだ!」 

こっちの身にもなれっての。 
肩から下にかけて背中は下痢便塗れだぞ。 
ちっとは同情してくれてもいいだろうが。 

バニル「いや、失敬。………………フハッ!」 

カズマ「めぐみん、アクアを呼んでこい」 

めぐみん「わざわざ呼びに行く手間が惜しいです。我が爆裂魔法で消し去ってくれる!」 

バニル「フハッフハハハハハハハッ!! 汝ら、悔しいかね? その悪感情、美味であるッ!!」 

駄目だこいつは。生かしておけん。 
めぐみんが本物の爆裂魔法の詠唱を開始。 
俺はなんとか杖を拾いにいく隙を伺う。 

バニル「おっと、物騒な真似はよせ。もとより吾輩は商談に来たのだ。そう、丁度、今の貴様らにぴったりのガラクタを用意してある」 

ガラクタを持参して商談なんて舐めてやがる。 
大方、全てを見通した上でピックアップしたのだろう。そうなると、少々気になってくる。 

バニル「汝ら、悪魔の品を欲しがるかね?」 

その文字通り、悪魔の囁きに、俺とめぐみんは頷くことしか出来なかった。

18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 22:10:23.44 ID:bWrcWJ2t0
アクア「たっだいまぁー!」 

ダクネス「いま帰ったぞ」 

結局、バニルから悪魔の品を買い取り。 
100万エリスほど散財する羽目に。とほほ。 
しかし、おかげでどうにか間に合った。 
リビングは綺麗で清潔だ。無論、匂いも皆無。 
完全に無臭空間へと浄化されていた。 
帰宅したアクアとダクネスも、昼間に何があったのか全く気づいていないようだ。良かった。 

何を隠そう、バニルの商品は消臭剤。 
まさに、今の俺たちにはうってつけだった。 
着替えた俺とめぐみんは部屋を掃除して、消臭剤を床やらカーテンやらに吹き付けまくった。 
それが功を奏して、大便の臭気は消えた。 

とはいえ、ガラクタはガラクタである。 
ウィズが仕入れた品は例外なく不良品だった。 
それだけが、心配の種として残っていた。 

アクア「今日はお土産があるの!」 

無闇にハラハラしていても仕方ない。 
どっしり構えていよう。きっと大丈夫さ。 
とりあえず、アクアの土産とやらに注目する。 

アクア「じゃーん! 立派なマツタケよ!」 

それは大層立派な、マツタケだった。

19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 22:13:30.43 ID:bWrcWJ2t0
カズマ「ほう、これはたしかに立派だな」 

アクア「でしょ? カズマさんのエノキタケよりも何倍も立派だと思わない?」 

めぐみん「それはいくらなんでも言いすぎですよ、アクア。カズマはエリンギくらいです」 

ダクネス「わ、私はシイタケ程度だと思っていたのだが、平均はどのくらいなんだ……?」 

こいつら、好き勝手言いやがって。 
平均には達していると思いたい。切実に。 
マツタケと張り合う気はないけれど。 

アクア「惣菜屋のおばちゃんが川で一本釣りしたのをくれたの! いつも手伝ってくれてるからそのお礼にって! えへへ、褒められちゃった」 

それ、完全に給料の代わりだぞ。 
この世界のマツタケの相場がいくらかは知らないが、間違いなくお前の日当よりは安いだろ。 
そんなこともよりも、川でマツタケを一本釣りという点が気になる。えっ? どういうこと? 

めぐみん「さっそく三枚におろして、七輪で焼きましょう! この時期のマツタケはそれが一番美味しい食べ方です! カズマ、火を下さい!」 

カズマ「お、おう。ティンダー!」 

マツタケを三枚におろす? 
よくわからないが、とりあえず。 
俺は七輪の炭に魔法で火を点けた。

20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 22:16:04.38 ID:bWrcWJ2t0
めぐみん「いい感じに焼き目が付いてきましたね。そろそろ、食べ頃ではありませんか?」 

アクア「いいえ、まだよ! めぐみん!」 

しばらく、マツタケを炙った。 
めぐみんの言う通り焼き加減は上々。 
いい感じに焼き目が付いて美味そうだ。 

ダクネス「しかしアクア、これ以上焼いては焦げてしまうのではないか?」 

ダクネスのもっともな指摘に、何故か焼き奉行を気取るアクアは人差し指をちっちっと振り。 

アクア「マツタケは香りを楽しむものなの。食感や味は二の次三の次よ。部屋中に香りが充満するくらい炙らないとせっかくのマツタケが勿体ないわ。だけどおかしいわね、全然香りがしないわ。私ったら、鼻が詰まってるのかしら」 

マツタケ論を語り終え、鼻をかむアクア。 
感心するダクネスをよそに、俺たちは慌てる。 
ちらりとめぐみんと視線を交わす。 
むずむず何やら言いたそうな口元をチャック。 
昼間の一件は、決して表沙汰にしてはならん。 

ダクネス「部屋いっぱいのマツタケの香りか」 

期待に胸を膨らませるダクネスには申し訳ないが、今日この日に限ってはそれはありえない。 
理由は単純明解だ。消臭剤のせいである。 

ウィズが仕入れた消臭剤は、あらゆる匂いを持続的に消し去る優れものだった。 

難点は、良い匂いもしなくなること。 
要するに、マツタケの香りも消していた。 
俺たちは香りがないマツタケを食うのだ。 

それ、なんて罰ゲーム?



21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 22:19:23.02 ID:bWrcWJ2t0
アクア「おかしいわね」 

ダクネス「なあ、アクア。そろそろ諦めよう」 

アクア「これだけ炙れば部屋いっぱいに香りが広がる筈なのに、どうしてちっとも匂わないのかしら。総菜屋のおばちゃんに偽物を押し付けられたのかも知れないわね。でも、タダだったのに」 

ぷすぷすと、マツタケが焦げはじめた。 
それでも一切焦げ臭さはない。驚きの消臭力。 
とうとう総菜屋のおばちゃんまで疑われる始末に、俺とめぐみんは何も言えずに顔を伏せる。 

結局、焦げたマツタケをモソモソ食った。 

香りのないマツタケは、はっきり言ってプラスチックか発泡スチロールのようで不味かった。 
おまけに焦げたせいで、ほろ苦い。最悪だ。 

それが大層不満だったらしく、アクアはやけ酒を飲み、酔い潰れた可哀想な女神を、今ダクネスが部屋まで運んで介抱してくれている。 

めぐみん「カズマ」 

カズマ「なんだよ」 

めぐみん「罪悪感に押し潰されそうです」 

カズマ「言うな。俺だって同じ気持ちだ」 

部屋に残った共犯者の俺たちは罪を悔いた。 
それでも、部屋がうんこ臭いよりはマシな筈。 
うんこ臭い中、マツタケを食うよりはよっぽど良かったと、そう思うしかなかった。

22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 22:21:34.77 ID:bWrcWJ2t0
めぐみん「昼間の件ですが……」 

カズマ「忘れろ。俺も忘れてやるから」 

蒸し返そうとするめぐみんを黙らせる。 
今思い出しても、ばっちい記憶だ。汚すぎる。 
一刻も早く消し去るべきだと思ったのだが。 

めぐみん「……ちょっとだけ、愉しかったです」 

何言ってんだ、こいつ。 
どうやらめぐみんは本当にいかれている。 
どうしてこんなやつと親しくなったのやら。 
だけど、仲間だし、大切な女の子だから。 

カズマ「ま、たまには悪くないよな」 

めぐみん「ふふっ。やっぱりカズマは優しいですね。大好きです。ずっとずっと愛してます」 

ちょっとくらい甘やかしても、いいと思った。 


【このフハッらしい世界に祝福を!】 


FIN

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