めぐみん

    1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 21:13:20.50 ID:HfQ+yNW40
    めぐみんばかり贔屓してはいけないと義憤に駆られ、今作はダクネス視点での物語となります。 
    そうした作風や卑猥な表現が苦手な方は、くれぐれもご注意ください。 

    それでは以下、本編です。




    2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 21:14:55.64 ID:HfQ+yNW40
    私の名は、ダクネス。 
    クルセイダーを生業としている者だ。 
    防御には自信はあるが、攻撃はからきし。 
    どれだけ剣を振るおうが、全く当たらん。 
    それ故に、いつも仲間に苦労をかけていた。 

    カズマ「ちょっとは攻撃を当てろよ!」 

    ダクネス「す、すまない……次こそは、必ず」 

    カズマ「次も何も当たった試しがないだろ!」 

    ダクネス「うぅ……何でもするから許してくれ」 

    クエストの帰り、私は叱られていた。 
    叱っているこの男は、サトウカズマ。 
    私のパーティのリーダーで、黒髪の青年だ。 
    攻撃が当たらないせいで、戦闘は大苦戦。 
    その尻拭いをするのは、いつも彼だった。 
    そんなカズマは私の謝罪を受けて、不意に。 

    カズマ「ん? 今、何でもするって言ったか?」 

    その、まるでつい今しがた名案を閃いたかのような口調で確認され、私は迂闊だったと悟る。 
    こんな時だけは、本当に耳ざとい奴だ。 
    しかも、自らの欲望に忠実でタチが悪い。 
    どうせあられもないことを要求するのだろう。 
    それが、この男の駄目なところであり。 
    同時に、私好みのタイプであるとも言えた。 

    ダクネス「くっ……! やむを得ん……何でも言ってみろ! どんな要求でも、私は飲んでやる!」 

    するとカズマは、私にこんな要求をしてきた。

    3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 21:17:30.97 ID:HfQ+yNW40
    ダクネス「なあ、カズマ」 

    カズマ「なんだよ、ダクネス」 

    場面は変わって、ここは私の部屋だ。 
    戦闘での不手際の責任を取らされている。 
    ではどのように責任を取らされたかというと。 

    ダクネス「ほ、本当に、これ以上何もしないのか? それはそれで、かなり辛いんだが……」 

    カズマ「しないよ」 

    ダクネス「しかし、抱きつくだけなんて……」 

    私は今、カズマに抱かれていた。 
    しかも、ベッドの上で、だ。服は着たまま。 
    カズマが上で私が下だ。彼が覆い被さる格好。 
    仰向けで、股の間にカズマの腰を挟んでいる。 
    カズマはうつ伏せで、私を抱きしめていた。 
    それはいろいろと、たまらない体勢だった。 
    しかし、カズマはさっきから微動だにしない。 

    ダクネス「せ、せめて、胸を揉むとか……」 

    カズマ「おかまいなく」 

    ダクネス「キス、するとか……」 

    カズマ「間に合ってます」 

    さっきからずっとこんな調子なのだ。 
    私の胸に顔を埋めて、抱きしめるだけ。 
    それ以上は一切、何もしてこない。 
    クエストの帰りに告げられた要求が、これだ。 

    『気が済むまで、抱かせろ』 

    その要求に胸を高鳴らせた私は、愚かだった。

    4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 21:20:42.09 ID:HfQ+yNW40
    彼に抱かれながら、窓の外を眺める。 
    今日は晴天で、澄んだ青空が眩しい。 
    天空を舞う渡り鳥の群れが美しかった。 
    時間はゆっくりと流れて、ドキドキしている。 

    白状すると、私はカズマのことが好きだ。 

    しかし、その気持ちは封印している。 
    他にもこいつを好きな者がいるからだ。 
    それはよりにもよって、仲間のめぐみん。 
    爆裂魔法しか習得していない変わり者のアーク・ウィザードだが、小柄で顔立ちは可愛らしく、何より愛嬌があって魅力的な美少女だった。 

    それに比べて、私ときたら。 

    ダクネス「はあ……」 

    思わず、ため息が溢れた。 
    私はちっとも愛嬌がない。 
    おまけに背が高く、庇護欲も唆らない。 
    だからきっと、駄目なのだろう。 
    だからきっと、彼は何もしてくれないのだ。 

    ダクネス「可愛く、なりたいな……」 

    思わず呟いてから、しまったと我に返る。 
    油断した。聞かれてしまっただろうか。 
    もし聞かれていたら、絶対に馬鹿にされる。 
    もうひとりの仲間である宴会芸が得意なアーク・プリーストのアクアや、先程紹介しためぐみんにすぐさま言いふらされてしまうだろう。 

    ダクネス「い、今のは、その……」 

    なんとか誤魔化そうと必死に言い訳を考えていたのだが、どうやらその心配は杞憂だった。 

    ダクネス「なんだ、寝てしまったのか」 

    すやすやと、規則正しい彼の寝息が聞こえて。 
    どっと、疲れた。緊張した私が馬鹿みたいだ。 
    こっちはこんなにも、ドキドキしているのに。 

    やはり私には、魅力が全くないらしい。



    5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 21:23:25.64 ID:HfQ+yNW40
    ふと、カーテンを揺らすそよ風に乗って、カズマの匂いが鼻腔をついた。男の子の匂いだ。 
    その香りに、より一層胸が高鳴るのがわかる。 

    そこで不意に、やっぱり好きだと思った。 
    好きだなと思い、好きだと改めて実感する。 
    私は今、自分の好きな男を、抱いていた。 

    それを自覚すると、もうどうにもならなくて。 
    彼の背に手を回して、恐る恐る抱きしめた。 
    ゴツゴツと骨張っていて意外と筋肉質な感触。 
    冒険者となる前は、アクアと2人で肉体労働に勤しんで日銭を稼いでいたらしいので、その際に鍛えられたのだろうか。意外な一面だった。 

    ダクネス「これが、男の子か……」 

    思わず呟いて、自らの経験の少なさを恥じる。 

    実は私は、名門ダスティネス家の一人娘だ。 
    本名は、ダスティネス・フォード・ララティーナというのだが、この名前は好きではない。 
    無闇に権力を振りかざすつもりはないし、なによりララティーナの響きが自分には合わない。 
    可愛い名前と、可愛くない自分が一致しない。 
    だからもっぱらダクネスという偽名で通した。 

    そんなわけで、要するに私は貴族の娘であり。 
    同時に世間知らずな『箱入り娘』でもあった。 
    故に、これまで男の子と接する機会は少なく。 
    初めてと言ってもいいその感触に夢中だった。 

    ダクネス「……幸せとは、このことか」 

    このまま時が止まってしまえばいいと思った。

    6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 21:25:42.97 ID:HfQ+yNW40
    すっかり熟睡しているカズマの髪を撫でる。 
    直毛の黒髪は、少々ごわついていた。 
    たまには櫛のひとつでも入れたらいいのに。 
    とは思うが、こいつはこれでいいのだろう。 

    なにせ彼は冒険者だ。身なりなど頓着しない。 
    聞けば、どこか遠い地からやってきたという。 
    目的は、嘘か真かはわからないが、魔王討伐。 
    まるで、英雄譚の勇者のようなプロフィール。 

    とはいえ、彼は弱かった。とても弱い。 
    職業はそのまま冒険者であり、最弱職。 
    武器や装備はどれも貧相で量産品である。 
    特別な魔法が扱えるわけでもなく、ステータスも貧弱で、おまけに容姿も至って普通だった。 
    これでは魔王討伐など、夢のまた夢だろう。 

    それでも、何故か魔王軍の幹部を数々倒した。 

    最弱職の冒険者でありながら。 
    自らの出来る範囲で知恵をこらし。 
    真っ当とはとても言えぬ手段で勝利した。 

    時には目も当てられないような戦法も使う。 
    その様は、とても英雄とは呼べない、無様。 
    それでも私の目には輝いて映ったのが事実。 

    ダクネス「本当にお前は、おかしな男だよ」 

    そんな男に惚れた私も充分おかしな女だろう。

    7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 21:28:32.76 ID:HfQ+yNW40
    ダクネス「んっ……ふぅっ」 

    はしたないのは承知の上だ。だけど少しだけ。 
    このくらいなら問題ないだろうと勝手に判断。 
    ふとももで、カズマの腰を、ぎゅっと挟んだ。 
    すると身体の奥がむずむずした。気持ちいい。 
    思わず、嬌声が漏れる程の快感に、我を失う。 

    もういっそのこと、寝込みを襲おうか。 
    今ならば、一発で妊娠する自信があった。 
    既成事実さえ作れば、こっちのものだ。 
    あとはこの男を婿として迎え入れるだけ。 

    我がダスティネス家は金持ちではないけれど。 
    それでもこいつひとりくらいなら私が養おう。 
    私が稼いだ金で、服を着せて、飯を食わせる。 
    そして私は次々と子供を産み、大家族を作る。 
    そうすればダスティネス家はひとまず安泰だ。 
    誰にも文句は言わせない。この男は私だけの。 

    その時、ズドンッ! と、爆発音が轟いた。 

    衝撃波によって、ビリビリと窓が震える。 
    それを受け私は現実に引き戻され、我に返る。 
    今のは間違いなく、めぐみんの爆裂魔法だ。 
    いつものように被害を出さぬよう、アクアを連れて街はずれまで出向いてぶっ放したようだ。 
    そうだ、めぐみんがいる。それに、アクアも。 

    ダクネス「私はなんて、自分勝手な女だろう」 

    冷静さを取り戻して、愚かさを悔やんだ。 
    カズマを攫うような真似は、してはいけない。 
    私にとっても他の2人にとっても大切な存在だ。 
    それを独占することは、断じて罷り通らない。 

    だけど、それでも、今だけは。 

    ダクネス「今だけは……お前は私のものだ」 

    そんな考えを抱くのは、許されないだろうか?

    8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 21:35:31.14 ID:HfQ+yNW40
    ダクネス「そろそろ、2人が帰ってくるな」 

    爆発音が聞こえてから、30分程が経過した。 
    今頃、爆裂魔法を放ち、消耗して動けなくなっためぐみんをアクアがおんぶして、屋敷を目指して歩いているだろう。夢の時間は終わりだ。 

    ダクネス「ほら、カズマ。いい加減に起きろ」 

    名残惜しいが、2人に目撃されたら大変だ。 
    カズマを起こさないと、めぐみんに叱られる。 
    しかし、なかなか起きる気配がなく、困った。 
    あまり乱暴なことはしたくないが、仕方ない。 
    意を決して、大声で呼びかける、その直前に。 

    カズマ「……母さん」 

    ダクネス「だ、誰が母さんだっ!?」 

    おかしな寝言についムキになってしまった。 
    私は母親と間違われるような年齢ではない。 
    本当に失礼な奴だと憤慨してから、ふと思う。 

    そう言えば、こいつの故郷は遠く離れている。 

    こっちに来てから、一度も帰った様子はない。 
    そう考えると、先程の寝言にも納得がいった。 
    カズマは怒鳴られたというのにまだ寝ている。 
    その寝顔は、私の母性を刺激するものだった。 

    ダクネス「はあ……今日だけは特別、だからな」 

    ため息をひとつ吐いて、頭を撫でてやる。 
    カズマにはこれまで散々世話になっていた。 
    特に、私の結婚騒動の際は、苦労をかけた。 
    だから今だけは母親の代わりを務めてやろう。 

    ダクネス「とはいえ、息子とは思えないが」 

    苦笑しつつも、起こすことは諦めた。 
    なに、どうにでもなるさと、楽観してみる。 
    なんとなく、鼻歌を口ずさんでみたりして。 
    そこで自分の機嫌が良いことを、自覚した。 

    不意に、結婚騒動の懐かしい記憶が蘇る。 
    彼に半ば攫われる形で婚姻をご破算にされた。 
    思えば、あの時に私は自らの恋心に気づいた。 

    ダクネス「必ず責任は取って貰うからな」 

    この行き場のない恋心を、彼はどうするのか。 
    それを想像すると、気分が高揚した。 
    早く気持ちを伝えられる日を夢見ながら。 

    私は鼻歌を口ずさみ、思い人の髪を撫でた。



    9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 21:39:18.39 ID:HfQ+yNW40
    めぐみん「聞いてくださいダクネス!」 

    それからほどなくして、2人が帰ってきた。 
    どうやら道中で問題が発生したらしい。 
    部屋に駆け込んできためぐみんが説明した。 

    めぐみん「我が爆裂魔法のあまりの威力に驚いたジャイアント・トードが群れをなして押し寄せて、危うく食べられてしまうところでした! ぬるぬるになってしまったので、お風呂に入ろうと思うのですが、ダクネスも一緒に入りませんか? ……って、どうしてカズマがここに?」 

    ダクネス「こ、これは、その……!」 

    ひと息に事の次第を語り終えて、気づかれた。 
    キョトンとした顔のめぐみんが、寄ってくる。 
    なんとか誤魔化そうと思ったが、もう無理だ。 

    めぐみん「お楽しみだったのですか?」 

    ダクネス「ち、違う! 別にやましいことは何もしていない! 本当だ! 信じてくれっ!!」 

    めぐみん「ふむ、たしかに着衣に乱れはありませんね。カズマもぐっすり寝ているようです」 

    しげしげと私たちを冷静に観察するめぐみん。 
    事ここに至っても、カズマは起きなかった。 
    すると、めぐみんがおもむろに、カエルの唾液でべたついた手を彼のマントで拭おうとして。 

    めぐみん「むっ?」 

    さっと、マントが逃げたように見えた。 

    めぐみん「ほほう。なるほど……まあ、いいでしょう。今日のところは、大目に見てあげます。それではダクネス、お風呂に行きましょう」 

    ダクネス「ま、待ってくれ。まだカズマが寝ていて、私は動けない。だから、もう少し……」 

    めぐみん「いいから行きますよ! 既にお風呂場でアクアがお待ちかねです。その男は恐らく当分起きませんので、その辺に寝転がしておけば平気です! さあ、早くしてください!」 

    そうして、半ば無理矢理引きずられるように。 
    私はカズマから、べりっと、引き剥がされた。 
    身体に残った彼の感触と匂いが、切なかった。

    10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 21:42:21.24 ID:HfQ+yNW40
    めぐみん「ダクネス、髪を洗ってください」 

    ダクネス「ああ、わかった」 

    強制連行された風呂場にて。 
    シャンプーを片手にめぐみんが寄ってきた。 
    彼女の申し出を承諾して、髪を洗ってやる。 

    ダクネス「痒いところはないか?」 

    めぐみん「平気です。それよりも、ダクネス」 

    ダクネス「ん? どうかしたのか?」 

    めぐみん「本当に何もなかったのですか?」 

    彼女らしいストレートな問いかけ。 
    それは先程の光景についてだろう。 
    務めて冷静にその質問に返答する。 

    ダクネス「ああ、本当に何もなかったよ」 

    めぐみん「でも下着はぐっしょりでしたよ?」 

    ダクネス「頼むからそれは言わないでくれ!」 

    めぐみん「お尻までびっしょりだったので、もしや、お漏らしをしたのかと思ったのですが」 

    ダクネス「そ、そんなわけないだろう!? あれはただの汗だっ!! ほら、泡を流すぞ!!」 

    我ながら、苦しい言い訳だったとは思う。 
    しかし、下着を身に着けていたのが証拠だ。 
    どんな状態であれ、脱いでないならセーフ。 
    たとえ、お尻までびっしょりだとしても、だ。 

    めぐみん「ま、そういうことにしておきます」 

    やけにあっさりと、めぐみんは引き下がった。

    11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 21:45:21.79 ID:HfQ+yNW40
    ダクネス「なあ、アクア」 

    アクア「ん? なによダクネス、どうかした?」 

    ダクネス「カズマの故郷についてだが……」 

    アクア「カズマさんの故郷?」 

    湯船に浸かりながら、アクアに聞いてみる。 

    ダクネス「帰れるような場所ではないのか?」 

    アクア「難しいわね。なにせ別の世界だから」 

    あっけらかんと、アクアはそう宣いた。 
    それは俄には信じがたい所在地。異世界。 
    前に、そのような話を聞いたことはあった。 
    しかし、どうにも現実味がない話だった。 

    ダクネス「その設定は本当なのか?」 

    アクア「嘘をつく理由なんてないでしょう? ちなみに、何を隠そうこの私は水を司る女神……」 

    めぐみん「たぶん、本当だと思いますよ」 

    アクア「ちょっと! どうして私の正体に興味を持ってくれないのよ!? もっと注目してよ!」 

    話に加わっためぐみんが肯定した。 
    ひとまずアクアはスルーすることにして。 
    まずはめぐみんにその根拠を聞いてみる。 

    ダクネス「どうして本当だとわかる?」 

    めぐみん「それがどうやら、私のご先祖様を作った人がなんとカズマと同郷らしいのですよ」 

    ダクネス「ほう? 紅魔族を作り上げた人物か」 

    それはなかなか興味深い事実だった。 
    紅魔族は魔法の扱いに秀でた種族である。 
    その力は、魔王軍の精鋭に匹敵するほど。 
    しかしながらその生態や進化の過程は不明瞭。 
    それが異世界人の仕業ならば、説明はつく。 

    ダクネス「となると、奴は本当に異世界人か」 

    アクア「さっきからそう言ってるでしょ!!」 

    アクアの喚き声を聞き流しながら思案に耽る。



    12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 21:48:29.94 ID:HfQ+yNW40
    めぐみん「何を考えているのですか?」 

    ダクネス「ん? ああ、実はあいつの母親について、ちょっと思うところがあってな……」 

    めぐみんの問いかけに答えると、アクアがキョトンと首を傾げて、質問を重ねてきた。 

    アクア「カズマのお母さんがどうかしたの?」 

    ダクネス「それが、寝言で母を呼んでいて……」 

    アクア「なにそれ、ぷーくすくす! なによカズマさんったらマザコンなの? キモすぎてウケるんですけど! ヒキニートでマザコンとか!!」 

    めぐみん「アクアは少し黙っていてください」 

    爆笑するアクアをぴしゃりと窘めためぐみん。 
    優しい彼女は、物憂げな表情を浮かべていた。 
    カズマが心配なのだろう。私も同じ気持ちだ。 

    ダクネス「母に会えないのは、さぞ辛かろう」 

    めぐみん「ダクネス……」 

    私の母もまた、既に他界して故人だった。 
    カズマの母親は亡くなったわけではない。 
    それでも、会えないのならば、同じだ。 

    ダクネス「なんとか元気付けたいのだが……」 

    アクア「はい! 私に名案がありますっ!!」 

    元気に手を挙げたのはアクア。不安しかない。

    13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 21:51:56.11 ID:HfQ+yNW40
    ダクネス「名案とはどんなものだ?」 

    アクア「母乳を飲ませればいいと思います!」 

    やっぱり駄目だった。いつものアクアだ。 

    ダクネス「母乳など出るわけないだろう!?」 

    アクア「えっ? 出ないの?」 

    ダクネス「当たり前だっ!!」 

    子供を産んでいないのに出るわけがない。 
    どれだけ育っていても、出ないものは出ない。 
    そんなことは誰もが知っている常識なのに。 
    アクアは不思議そうに私を見つめ、ぽつりと。 

    アクア「私なら出せるわよ?」 

    衝撃的事実を、口走った。 

    めぐみん「だ、出せるのですかっ!?」 

    即座に食いついためぐみんに、アクアは頷き。 

    アクア「ええ、もちろん。ほら、花鳥風月!」 

    ぷしゃっ! っと、噴水のように母乳を出した。 

    めぐみん「うわっぷ! 止めてくださいっ!」 

    アクア「あ、ごめんね。はい、おしまい」 

    モロに顔面に浴びためぐみんが溺れかけて。 
    テヘペロと謝罪したアクアが母乳を止めた。 
    するとめぐみんが顔に付いた母乳を舐めて。 

    めぐみん「ただの白い水ではないですか」 

    アクア「そんなの当たり前じゃない。なんたって、私は水を司る女神、アクアなんだから!」 

    要するに、ただの水芸でしかないようだった。

    14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 21:54:25.51 ID:HfQ+yNW40
    アクア「いい? 母乳ってのは、母の愛を放出するイメージが大切なの。我が子を思いやる気持ちと、慈しみの心を持って気合いと根性で出すの。わかった? わかったなら、やってみて!」 

    めぐみん「こうですか? 花鳥風月!」 

    アクア「全然違うわ! こうよ! 花鳥風月!」 

    アクアなりにコツを授けているらしい。 
    めぐみんはすっかり乗り気で悪戦苦闘。 
    私の見解では、それは絶対に無駄な努力だ。 
    そもそも何なんだ、気合いと根性って。 
    冷めた気持ちでやり取りを眺めていると。 

    めぐみん「どうやら、私には難しいようです」 

    ようやく諦めたらしいめぐみんを、労う。 

    ダクネス「めぐみんはカズマの為となると、いつも全力で一生懸命だな。あいつは果報者だ」 

    すると、めぐみんは誇らしげに薄い胸を張り。 

    めぐみん「そのうちいくらでも出せるようになって、カズマにお腹いっぱい飲ませてあげます。そうすれば、我が家は牛乳いらずです!」

    15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 21:56:57.59 ID:HfQ+yNW40
    なんという浅はかな目標だろう。 
    母乳はいくらでも出せるものではない。 
    しかしながら、その健気さが微笑ましかった。 
    こうした可愛げを、私も見習うべきだろう。 
    改めて、めぐみんの可愛さに感心していると。 

    めぐみん「ですが、今の私には力不足です」 

    自分の発展途上の胸をつねり、ため息ひとつ。 

    めぐみん「なので、今回は任せましたよ?」 

    にやりと笑いながら、私の胸を突いてきた。 

    ダクネス「大きくても出せるものではない」 

    めぐみん「ですが、大は小を兼ねるとも言いますし、案外なんとかなるのではないですか?」 

    大は小を兼ねるの使いどころを間違っている。 
    この場合、大きさは関係ないのに。それでも。 
    めぐみんは、すっかり私を信じ切った様子で。 

    めぐみん「ダクネスならきっとあの男を元気付けてあげられる筈です。この私が保証します」 

    どこからその根拠が生まれるのか。とはいえ。 
    そこまで自信満々に言い切られると、なんとも不思議なもので、なんだって出来る気がした。 

    ダクネス「ああ! 私に任せろ!」 

    めぐみんのその期待に必ずや応えてみせよう。

    16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 21:59:17.22 ID:HfQ+yNW40
    ダクネス「カズマ、起きてるか?」 

    風呂から上がり、部屋に戻った。 
    めぐみんはアクアにもう少し習うとのこと。 
    たぶん、邪魔が入らないように時間を稼いでくれるつもりだろう。本当に頭が下がる思いだ。 
    このせっかくの好機を、無駄にはしない。 
    カズマはまだ、私のベッドで寝ていた。 
    先程から動いた形跡はない。ぐっすりだ。 
    呼びかけても、起きる気配はなかった。 
    ならば、よし。あとはこちらの思うまま。 

    ダクネス「大丈夫、私なら出来る!」 

    覚悟を決めて、服を脱ぎ捨てた。 

    とはいえ、パンツは脱がない。 
    流石に全裸は恥ずかしかった。 
    そんなヘタレな私をめぐみんは叱るだろう。 

    だけどこれが、今の私の限界だった。 
    なにせこれから、カズマを膝枕するのだ。 
    後生だから、パンツくらい穿かせてくれ。 

    ダクネス「これでよし。あとは……」 

    カズマの頭を膝に乗せて準備完了。 
    えっ? この状況で何をするかって? 
    そんなことはわかりきっている。授乳だ。 

    出るわけはないが、形だけでも。 
    母親の雰囲気を感じて欲しかった。 
    だからその為に、私の胸を口元に近づけて。 

    ダクネス「ほ、ほら、カズマ。ご飯でちゅよ」 

    カズマ「バインドッ!!」 

    ダクネス「ふぇっ!?」 

    前触れなく、突如跳ね起きたカズマ。 
    腰に束ねたロープを用いてスキル発動。 
    瞬く間に、私は半裸のまま拘束された。

    17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 22:02:21.64 ID:HfQ+yNW40
    ダクネス「な、何をするんだっ!?」 

    カズマ「それはこっちの台詞だ! この変態!」 

    なんという言い草。よもや変態とは。 
    恩知らずにも程がある。絶対に許せん。 
    私がどれほど恥を忍んで授乳しようとしたか。 
    それなのに、この仕打ち。正直、最高だ。 

    ダクネス「くっ……私は決して屈しないぞ!」 

    カズマ「ほう? それならば、試してやろう」 

    にやりと口角を釣り上げ、カズマが囁く。 

    カズマ「ご飯でちゅよ~」 

    ダクネス「やめてくれっ!?」 

    さっきの自分を消し去りたい。 
    しかし、プレイとしては文句なし。 
    悔しいけど、ついつい感じてしまう。 

    カズマ「まったく、何をやってんだか」 

    ダクネス「うぅ……私は、お前の為にと思って」 

    カズマ「お前は俺の母親じゃないだろ?」 

    ダクネス「しかし、雰囲気だけでもと……」 

    カズマ「どこの世界に息子を興奮させる母親がいるんだよ。そんなんじゃあ、バブみもなにもあったもんじゃないだろうが。たとえここが異世界だろうと、俺はそんな母親を認めないぞ」 

    心底呆れたように私は叱りつけるカズマ。 
    『バブみ』とやらが何かは知らないが。 
    とりあえず、わかることがひとつだけ。 

    ダクネス「興奮、してくれたのか……?」 

    カズマ「当たり前だろ。乳丸出しなんだから」 

    ダクネス「そうか……それなら、いい」 

    カズマ「はあ? なんだよ、変な奴だな」 

    女として見て貰えただけで、私は満足だった。



    18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 22:06:19.61 ID:HfQ+yNW40
    カズマ「もう二度とこんな真似すんなよ?」 

    ダクネス「わ、わかったから解いてくれ!」 

    カズマ「よし、解いてやろう。その前に」 

    説教が終わり、ロープを解く、その間際。 

    カズマ「あのな、ダクネス」 

    ダクネス「ん? どうかしたのか?」 

    カズマ「お前は充分、可愛いよ」 

    ダクネス「んなっ!?」 

    囁かれたその言葉には、思い当たる節がある。 
    どうやらこの男は狸寝入りをしていたらしい。 
    よりによって、あの呟きを聞かれていたとは。 

    何たる辱め。過去最高だろう。 
    しかも、可愛いとか言われた。 
    カズマが、私のことを、可愛いって。 
    嬉しい。嬉しすぎる。夢みたいだ。 
    あまりに嬉しすぎて、おしっこ漏れそう。 
    全身にゾクゾクと、快感が巡る。 
    気を抜くと、いろいろと大変なことなる。 

    そんな私に、最後のトドメと言わんばかりに。 

    カズマ「色々とありがとな……ララティーナ」 

    ダクネス「そ、その名前で呼ぶなぁーっ!?」 

    羞恥心が絶頂に達した、その瞬間。 
    バインドを解かれて、私は解放された。 
    すると、せき止められていた水路が開通した。 

    ダクネス「んあっ!?」 

    カズマの前で、盛大に、おしっこを漏らした。

    19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 22:10:31.45 ID:HfQ+yNW40
    カズマ「うわっ! 何やってんだお前!?」 

    ダクネス「うぅ……見るな……いや、見てくれ」 

    カズマ「どっちだよ!? 事ここに及んでもブレないなお前は! 本当に度し難い変態だよ!!」 

    度し難い変態。なんて素敵な響きだろう。 
    ビクンビクンと痙攣しながら、悶絶。 
    このままでは、おしっこが止まらない。 

    それなのに、この男ときたら、容赦なく。 

    カズマ「なあ、ダクネス」 

    ダクネス「な、なんだ……?」 

    カズマ「今のってもしかして、『嬉ション』か? 『嬉ション』なんだな? そうなんだな?」 

    『嬉ション』とは何かは、定かではないが。 
    なんとなく、語感で伝わった。間違いない。 
    嬉しすぎて小便を漏らすという意味だろう。 
    それがどうやら、カズマ好みだったらしく。 

    カズマ「フハッ!」 

    もはや我慢の限界とばかりに、愉悦を漏らす。 

    カズマ「フハハハハハハハハハハッ!!!!」 

    ダクネス「わ、笑うなぁぁあああっ!!!!」 

    カズマ「フハハハハハハハハハハッ!!!!」 

    盛大に哄笑されて、私は快感に包まれた。 
    こちらも絶叫しているが、掻き消された。 
    カズマの嗤い声の方が、大きかったのだ。 

    耳障りで、頭に響く嗤い声。ガンガンする。 
    ガンガンして、ジンジンして、ガクガクだ。 
    ひとしきり嗤い、カズマは満足げな表情で。 
    ポンポンと、私の頭を優しく撫でてくれた。 

    カズマ「元気が出たよ。だから、心配すんな」 

    それは、大変ようございましたね、ご主人様。

    20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 22:13:12.04 ID:HfQ+yNW40
    カズマ「さてと、後片付けだな。とりあえず、ベッドのシーツを干す前にアクアを呼んで浄化して貰うから、ダクネスはそこで休んでろ」 

    ダクネス「はい、ご主人様」 

    カズマ「身分は貴族のお前の方が上だろうが」 

    ダクネス「私はもう、人ではありませんので」 

    身分なんてもはや意味をなさない。 
    ダスティネス家はお家取り潰しだ。 
    なにせ跡取りが漏らしてしまった。 
    次期当主はお漏らしの罪で人権を失ったのだ。 

    カズマ「なんでそんなに嬉しそうなんだ?」 

    ダクネス「ご主人様の家畜だからです」 

    カズマ「ほう? 家畜か」 

    ダクネス「何でも言うことを聞きます」 

    カズマ「なら、これからは『ララ』と呼ぼう」 

    ダクネス「それだけはやめてくれっ!?」 

    最後の最後まで、鞭を振るってくれる。 
    こんな男は他にはいない。こいつだけだ。 
    カズマは本当に、私の理想のご主人様だった。 
    この先何があろうとも、ずっと共に過ごそう。 

    この素晴らしいご主人様と共に、末永く。 


    【この素晴らしいお嬢様に嬉ションを!】 


    FIN

    21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 22:18:50.81 ID:HfQ+yNW40
    ご読了ありがとうございます! 

    一部訂正として、あとから確認したところ、どうも5レス目と6レス目の順序が逆のようでしたので、気になる方は脳内で修正して頂けるとありがたいです。 
    確認不足で大変申し訳ありません。 

    最後までお読み頂き、本当にありがとうございました!



    22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/25(水) 22:34:46.33 ID:6VDB/TaPo
    よかった次も期待せざるを得ない



    元スレ:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1532520800/

    1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 21:21:36.02 ID:DaHGsbQ60
    真の男女平等を追求した結果、今作はめぐみん視点での物語となっております。 
    そうした作風が苦手な方は、ご注意ください。 

    それでは以下、本編です。




    3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 21:29:33.57 ID:DaHGsbQ60
    どうも、めぐみんと申します。 
    私のことをご存知の方も多いとは思いますが、一応、初めに自己紹介をさせて貰いますね。 
    紅魔族出身で、アークウィザードを生業とするこの私は、爆裂魔法をこよなく愛する者。 
    故に、爆裂魔法以外の魔法は習得してません。 
    そのおかげで、様々な苦労を背負いました。 

    カズマ「なあ、めぐみん」 

    めぐみん「なんですか、カズマ」 

    カズマ「前にお前の爆裂道を認める発言をしたのは一時の気の迷いだったと認めるからさ、いい加減、爆裂魔法以外も覚えたらどうだ? あまりにも芸がなさすぎるだろ」 

    めぐみん「一芸に秀でていればそれで良いのです。多くを望めば、全てを失い兼ねません」 

    カズマ「多くを望めば、ねぇ」 

    今、私をおんぶしてくれている彼は、カズマ。 
    莫大な魔力を消費する爆裂魔法を放つと、私はしばらく身動きがとれなくなってしまいます。 
    なので戦闘の後はカズマに運んで貰うのです。 
    カズマは私が所属するパーティのリーダーであり、何を隠そうこの私の思い人でもあります。 
    そんな彼は、私の発言を受けて、何やら物思いに耽っている様子。少々気になる反応ですね。 

    めぐみん「何か思うところがあるのですか?」 

    カズマ「いや、なんでもないよ。気にすんな」 

    ダクネス「カズマ、そろそろ疲れただろう? めぐみんを背負う役目を代わろうか?」 

    気を遣う素ぶりを見せたのは金髪碧眼の美女。 
    クルセイダーのダクネスがそう申し出ました。 
    話をはぐらかしたカズマはその申し出に首を振り、しっかりと私を抱え直して、きっぱりと。 

    カズマ「大丈夫。責任を持って、俺が運ぶよ」 

    ダクネス「……そうか。うん、それがいい」 

    その、なんだからしくない男らしさに、嬉しい気持ちと複雑な気持ちを抱いてしまいます。 
    切なげなダクネスの表情が目に焼き付いて離れません。私は別に、この男を独占したいなどとは微塵も思っていないのに。もやもやします。 

    アクア「それなら、力持ちのダクネスには私が運んで貰うわ! 家までよろしくお願いね!」 

    微妙な空気の中、アクアはいつも通りでした。

    4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 21:33:14.21 ID:DaHGsbQ60
    カズマ「ダクネス、唐揚げを一個くれ」 

    ダクネス「ど、どうして私にたかるんだ!? 自分のを食べたら、それでおしまいだろう!!」 

    カズマ「だって、お前は肉付きが良すぎるし」 

    ダクネス「別に太っているわけではない! ……太って、ないよな? あ、おい! 目をそらすな! わかった! 仕方ないから唐揚げを一個やる!」 

    少々騒がしく賑やかな、いつもの夕食の風景。 
    今日の献立はジャイアント・トードの唐揚げ。 
    カズマとダクネスは口論しながらも仲が良さそうです。微笑ましいその光景を眺めていると。 

    ダクネス「あっ! こ、これは違うんだ、めぐみん。 私は別にカズマにあーんをしてやりたいなどとは微塵も思ってないからな! 本当だぞ!」 

    めぐみん「あーんをしても構いませんよ?」 

    ダクネス「だから、そんなつもりはなくて……」 

    アクア「なら、私が唐揚げを貰うわ! あーん」 

    ダクネス「うぅ……こんな筈ではなかったのに」 

    何故か言い訳を口にするダクネスは機を逃して、結局、アクアにあーんをする羽目に。 
    カズマが助け船を出す素ぶりはなく、それでいて、ちらちらとこちらを気にしていました。 
    その微妙な空気の中、アクアは満足そうです。 
    自分の最後の唐揚げを食べられた、ダクネス。 
    悔しげなその表情が、全てを物語っています。 

    ダクネスもまた、カズマに恋をしていました。

    6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 21:40:46.30 ID:DaHGsbQ60
    めぐみん「ダクネス、少々話があります」 

    ダクネス「なんだめぐみん。こんな夜更けに」 

    場面は変わりまして、その日の晩。 
    私はダクネスの部屋を訪れました。 
    ブラシを片手に迎え入れてくれました。 
    どうやら、髪を梳かしていたようです。 
    寝巻き姿ダクネスに、単刀直入に尋ねます。 

    めぐみん「ダクネスはカズマが好きですか?」 

    ダクネス「ぶっふぉっ!?」 

    反応は劇的でした。わかりやすいですね。 
    それまで淑女然としていたダクネスは盛大にむせ返り、何やら大慌てで言い訳を連ねます。 

    ダクネス「わ、私は別に、あの男のことなど……! 唐揚げについては、めぐみんの誤解だ! 少々食べすぎかと思い、奴に恵んでやろうと思っただけで、深い意味はないというか……」 

    めぐみん「そんな言い訳が聞きたいのではありません。私たちは仲間ではありませんか。正直にありのままの本心を打ち明けてくださいよ」 

    なるべく、優しくダクネスを諭しました。 
    すると彼女は顔を真っ赤にして、頷きました。 
    どうやら、私の目に狂いはなかったようです。 

    めぐみん「カズマのことが好きですか?」 

    ダクネス「はぃ……好き、です」 

    ようやく、本心を打ち明けてくれたダクネス。 
    俯いて、サラサラの金髪が赤くなった表情を隠すその姿は、流石は良家のご令嬢といった美しさであり、悔しながら私もつい、ときめいてしまいました。恋する乙女は、本当に綺麗です。 

    私も彼から見てそう映っているのでしょうか? 

    ふと、そんなことに思いを馳せて。 
    同時に、対抗心が燃え上がります。 
    ダクネスよりも、良く映って欲しい。 
    私の方がかわいいと、綺麗だと思って欲しい。 

    そう思ってしまうのは、おかしいでしょうか?

    8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 21:43:16.42 ID:DaHGsbQ60
    めぐみん「私は負けませんよ」 

    何はともあれ、ライバルに戦線布告です。 
    ようやく、同じ舞台に上がってくれましたね。 
    これからは熾烈なカズマ争奪戦を繰り広げることになるでしょう。とてもワクワクします。 

    しかし、ダクネスは、何故か泣きそうな顔で。 

    ダクネス「いや、私の負けでいいんだ」 

    めぐみん「はい?」 

    何を言っているのでしょう、この女は。 
    言ってる意味がわかりません。拍子抜けです。 
    せっかくライバルになれたのに敗北宣言とは。 
    我が魔導のライバルたるゆんゆんでさえ、もうすこしは骨のある反応を示すでしょうに。 

    ダクネスの態度は、見ててイライラしました。 

    めぐみん「ちっともやる気がないようですね」 

    ダクネス「ああ、そうだ。私はめぐみんとカズマを奪い合うつもりはない。あの男は譲るよ」 

    これには普段温厚な私もカチンときましたね。 
    えっ? 普段からキレたナイフですって? 
    何を馬鹿な。私は滅多なことではキレません。 
    ええ、この私が本気でキレたら、怖いですよ? 

    それをダクネスに、思い知らせてやります。



    9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 21:45:46.64 ID:DaHGsbQ60
    めぐみん「ダクネス」 

    ダクネス「なんだ、めぐみん?」 

    めぐみん「ちょっと、失礼しますね」 

    キョトンと首を傾げる寝巻き姿のダクネス。 
    彼女の胸元はいつもユルユルで、扇情的です。 
    もちろん、カズマの気を惹く為の格好です。 

    そのユルユルな胸元に、私は手を入れました。 

    ダクネス「ひゃんっ!?」 

    めぐみん「おや、また成長したのですか?」 

    ダクネス「こ、こら! 突然なにをする!?」 

    めぐみん「これだけのものを持ちながら意中の相手を譲るなど、嫌味でしかありませんよ。それで私が納得するとでも思っているのですか? いーえ、納得しませんとも。このまま揉みしだかれたくなければ、立ち向かって来なさい!」 

    ガシガシと、乱暴に揉みしだきます。 
    ダクネスの胸は、大きくて柔らかでした。 
    たびたびカズマに胸まで筋肉と揶揄されますがそんなことはありません。気持ちいいです。 

    一心不乱に揉んでいるとついに折れたらしく。 

    ダクネス「わかったからもうやめてくれ!」 

    めぐみん「では、反撃してください」 

    ダクネス「ああ、覚悟しろ、めぐみん!」 

    ガバッと、襲いかかってきたダクネス。 
    私もろとも、ベッドに倒れ込みます。 
    反撃したダクネスによって押し倒されました。 

    彼女のベッドは、とてもいい匂いがしました。

    12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 21:48:52.55 ID:DaHGsbQ60
    ダクネス「さあ! もう抵抗出来ないぞ!」 

    めぐみん「元より抵抗するつもりはないです」 

    ダクネス「ならば、先程の仕返しをくらえ!」 

    私に覆い被さる、ダクネス。 
    しかし、ちっとも重さは感じません。 
    私に体重がかからないように乗っています。 
    いつもカズマから重そうだと言われているので、自分の体重を気にしているのでしょう。 
    ダクネスは思いやりのある優しい女の子です。 

    けれど今だけは、そんな優しさは不要なのに。 

    ダクネス「あれ? めぐみんの胸はどこだ?」 

    めぐみん「おい! どこに目をつけているのですか! 胸なら目の前にあるだろう! 私の胸に対して文句があるのなら、聞こうじゃないか!!」 

    前言撤回します。どこが優しい女の子ですか。 
    この女、なかなかやりますね。驚きましたよ。 
    温厚な私をここまで怒らせるとは。ぷんぷん。 
    賞賛に値します。ええ、絶対に許せませんね。 

    めぐみん「品性のカケラもない胸だけが取り柄の牛女には、清貧なこの私の慎ましさが理解出来ませんか? 『清貧』の意味、わかります?」 

    ダクネス「ほう? 『清貧』という言葉に、『まな板』なんて意味があるとは始めて知ったぞ。勉強になったよ。めぐみんは物知りだなぁ」 

    それから私とダクネスは、大喧嘩をしました。

    14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 21:54:44.01 ID:DaHGsbQ60
    取っ組み合って、ひっかいて。 
    髪を引っ張り合って、ビンタして。 
    私とダクネスは、ボロボロになりました。 

    それでも、どこか清々しい気分です。 

    めぐみん「ダクネス」 

    ダクネス「なんだ、めぐみん。まだやるか?」 

    お互いに肩で息をして、満身創痍。 
    そんな有様でも、目に爛々と闘志を燃やすダクネスと、恐らく赤々と発光している私の瞳。 

    朝までやり合っても構わなかったのですが、私の目的は喧嘩することではありません。 

    めぐみん「私はカズマに節操を求めません」 

    ダクネス「しかし、そうは言っても……」 

    これまでも私としては、一夫多妻でも構わないと思っていました。そして今日ダクネスと喧嘩してその考えはより強固なものになりました。 
    その私の真意を即座に見抜いたダクネスは苦い顔。敬虔なエリス教徒の彼女には受け入れ難い提案であることは、無論、想定の範囲内です。 

    めぐみん「ダクネスは1番になりたいですか?」 

    ストレートに尋ねると、彼女は逡巡して。 

    ダクネス「……めぐみんはなりたくないのか?」 

    逆に尋ねられたので、即答します。 

    めぐみん「私が好きなカズマは、普段はだらしない上に頼りなくとも、パーティリーダーとしていざという時に仲間を命がけで守る男です。ダクネスがモンスターに囲まれている時や、あるいは無理矢理結婚させられそうな時に、あの男は最高に格好良いところを見せるのですよ」 

    ダクネス「……めぐみんを背負っている時もな」 

    おや、これは一本取られてしまいましたね。 
    流石は同じ男に恋をした者同士、私たちの趣味嗜好はどこか似通っているのかも知れません。



    16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 21:57:13.95 ID:DaHGsbQ60
    めぐみん「ならば、理解出来る筈です」 

    詰まる所、カズマは仲間のピンチに真価を発揮する男なのです。それ以外はロクでなしです。 
    故に、ダクネスあってこそのカズマであり、そして、私あってこそのカズマと言えましょう。 
    アクアはまあ、一時、置いておくことにして。 

    めぐみん「独り占めは、あの男の魅力を損なうだけです。ほら、よく言うではありませんか」 

    ダクネス「英雄、色を好む……か」 

    めぐみん「そう、それです。誠に残念ながら、私たちは英雄に恋をしてしまったのです。それならば、共に腹をくくるしかないと思います」 

    知らないところで英雄扱いされているカズマ。 
    今頃、くしゃみをしているかも知れませんね。 
    我ながら出来の良い屁理屈だったと思います。 
    頭の固いダクネスもようやく納得した様子で。 

    ダクネス「……わかった」 

    めぐみん「では、決まりですね」 

    承諾してくれたので、仲直りをします。 
    でも、その前に決めなければならないことが。 
    こればかりは、ダクネスにも譲れません。 

    めぐみん「妊娠出産は、私が先ですからね?」 

    ダクネス「わ、私はあいつの子などいらん!」 

    とかなんとか言いつつも。 
    それから一晩中、ダクネスは将来生まれてくる子供の名前をあれこれ考えていました。 
    おかげで寝不足です。本当にスケベな娘です。

    18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 22:02:08.19 ID:DaHGsbQ60
    さて、朝になりました。 

    めぐみん「おや? カズマの姿が見えませんね」 

    ダクネス「あいつはまだ寝てるのか?」 

    色ボケダクネスのせいで眠たい目をこすりながら、居間を見渡してもカズマが居ません。 
    私たちの結論を、聞いて貰う必要があります。 
    まあ、あの男はダクネスの言う通りいつも寝坊助なので特に問題視はしてなかったのですが。 

    アクア「カズマさんなら、朝早くにゆんゆんと出かけたわよ? 私の目にはデートに見えたわね。なんでも、『連れション』がどうのとか言ってたけど、2人で何をするつもりかしらね?」 

    どうやらこれは問題ですね。事案発生です。 
    何をやっているんですか、あの男は。 
    節操がないにも程があります。許せません。 
    えっ? 昨夜と言ってることが違うって? 
    それとこれとは話が別です。全然違います。 

    私はダクネスだからこそ、許したのです。 

    ゆんゆんのことは認めていません。 
    男友達の1人でも作ってから出直して来なさい。 
    まあ、聞くところによると外伝ではコソコソ何やらチンピラとつるんでいるようですが、それは本編には関係ありませんので、悪しからず。 

    めぐみん「行きますよ、ダクネス」 

    ダクネス「ああ、剣のサビにしてくれる!」 

    アクア「気をつけて行ってらっしゃい!」 

    私とダクネスは杖と剣を握り締めて。 
    いつになく慈愛の表情を浮かべたアクアに見送られ、いざ参らん。敵は千の魔法を扱う紅魔族。 
    恐らく厳しい戦いになるだろう。だがしかし。 

    めぐみん「連れションなど、させませんよ!」 

    我が名はめぐみん。 
    連れションを阻止する者。 
    だいたい、何ですか、『連れション』って。 

    私ともしてくれたことがないのに……バカ。

    19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 22:05:25.20 ID:DaHGsbQ60
    カズマ「ほらゆんゆん。ちっちしてごらん?」 

    ゆんゆん「む、無理ですよ。恥ずかしいです」 

    カズマ「大丈夫。すぐ気持ち良くなるからさ」 

    ダクネス「見つけたぞ、カズマ!」 

    めぐみん「何をしてるんですか、ゆんゆん!」 

    どうやら間一髪で間に合いました。 
    今にも下着を下ろそうとしているゆんゆん。 
    そしてそれを唆しているカズマ。現行犯です。 

    カズマ「やべっ! もう見つかった!」 

    ダクネス「こら、待て!」 

    ゆんゆん「め、めぐみん! これには訳が!」 

    めぐみん「人の男と知っての狼藉、断じて許せません。じっくりと訳を聞こうじゃないか!」 

    逃走を図るカズマはダクネスに任せて。 
    私はゆんゆんから事情聴取をしました。 
    もしかしたら情状酌量の余地があるかも知れないと思ったら、案の定どうも担がれたらしく。 

    ゆんゆん「仲の良い友達はみんな連れションしてるって。だから、連れションすれば友達になれるって言われて、それで……ごめんなさい!」 

    まったく本当に馬鹿な子です。 
    それは男同士の友情関係でしょうに。 
    男女間での連れションなどありえません。 

    友達に飢えたゆんゆんの心の隙をついたその巧妙な手口になんだからしくなさを感じて、私はまた、霧かかったもやもやした気持ちを抱きました。

    20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 22:07:58.68 ID:DaHGsbQ60
    ダクネス「ほらカズマ、神妙にしろ!」 

    カズマ「離せよっ! 俺はゆんゆんの友達になってやろうとしただけだ! 何も悪くないぞ!!」 

    とりあえず、ゆんゆんは釈放しました。 
    何度も謝っていたので、反省したようです。 
    そこにダクネスに捕まったカズマがやって来て、無様に喚き散らしています。最低です。 

    めぐみん「カズマ」 

    カズマ「めぐみんならわかってくれるよな! 俺は、お前の友達のゆんゆんを不憫に思って……」 

    めぐみん「少し、黙ってください」 

    パァンッ! と、乾いた音が響き渡りました。 
    それは愚かなカズマの頬を張った音です。 
    手を上げたのは、ダクネスではありません。 

    私が、思い切りカズマをビンタしたのです。 

    ダクネス「めぐみん……」 

    めぐみん「私は大丈夫ですよ、ダクネス」 

    不安げなダクネスに微笑んでみせて。 
    私のビンタを受け、拘束されたまま沈黙して物言わぬカズマをちらりと見やり、頼みます。 

    めぐみん「カズマを離してあげてください」 

    ダクネス「いいのか……?」 

    めぐみん「ええ、もう怒っていませんので」 

    ダクネスから解放されたカズマは、その場で体育座りをして、俯いたまま。何も言いません。 
    まるで泣いているようにも見えましたが、どうも歯を食いしばって涙を堪えているようです。 

    涙を見せられないような訳があるのでしょう。



    21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 22:09:59.92 ID:DaHGsbQ60
    めぐみん「なにがあったのですか?」 

    努めて優しく尋ねても、無反応。 

    めぐみん「言いたくないのですか?」 

    カズマは黙したまま、目も合わせてくれない。 

    めぐみん「仕方ないですね、最後の手段です」 

    私はおもむろに、カズマの頬に唇を近づけて。 

    カズマ「や、やめろよっ!」 

    ようやく、反応してくれました。 
    くすりと笑うと、彼はまた俯きます。 
    そんなカズマに、私の推理を伝えてみます。 

    めぐみん「私たちに嫌われるために、わざとあんな真似をした。違いますか、カズマ?」 

    ダクネス「嫌われる為に、だと……?」 

    私の言葉に驚くダクネス。 
    とはいえ、根拠はありません。 
    なんとなく、そんな気がしたのです。 
    ただの当てずっぽうの推論でしたが。 

    カズマ「ああ、そうだよ。俺は最低だろ?」 

    あっさりと、カズマは自白しました。

    22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 22:12:23.36 ID:DaHGsbQ60
    めぐみん「すると、ゆんゆんも共犯ですか?」 

    カズマ「違う! ゆんゆんは利用しただけだ!」 

    ふむふむ、随分と反応がよろしいことで。 
    嘘の匂いがしますね。バレバレです。 
    恐らく、口裏を合わせていたのでしょう。 
    まんまとゆんゆんに乗せられました。 
    どうやら、担がれたのは我々のようですね。 

    めぐみん「ダクネスはどう思いますか?」 

    ひとりで結論を出すのは早計であり禁物です。 
    昔の私ならばいざ知らず。今は仲間が居ます。 
    それも、同じ想いを抱く、言うなれば、同志。 
    カズマとの付き合いの長さも似たようなもの。 

    ダクネスはしばらく黙考してから、口を開き。 

    ダクネス「この男が、か弱い女子供を己の目的の為に利用出来るとは思えん。結託して我々を謀ったと言われた方が、まだ納得出来るな」 

    めぐみん「はい、私もそう思います」 

    どうやら、同じ結論に至ったようですね。 
    なんだか、嬉しくなります。一心同体です。 
    まさに文字通り、我が意を得てくれました。 
    これで、自分の結論に自信が持てたのですが。 

    カズマ「俺は単独犯だ! よく思い出してみろよ! 自分の目的の為にお前らみたいな女子供を利用することなんてしょっちゅうだろ!? 忘れたとは言わせないぞ! 俺を美化すんなよ!!」 

    まあ、思い当たる節は、多々ありますけどね。

    23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 22:15:13.48 ID:DaHGsbQ60
    めぐみん「私たちに対してはいいのです」 

    カズマ「なんでだよ!?」 

    めぐみん「仲間だからです」 

    たとえ、どれだけ騙されても。 
    利用されても、時には囮にされても。 
    どんなに酷い罪をなすりつけられたとしても。 

    相手が仲間ならば、許してあげましょう。 

    めぐみん「仲間とは、そういうものです」 

    してやったりとばかりに、微笑んであげます。 
    するとカズマは、まるで何か喉に詰まらせたような顔をして、苦しげに嗚咽を漏らしました。 

    カズマ「お前らの理想を、押し付けんなよ!」 

    そこでようやくカズマの苦悩を理解しました。 
    どうやら私たちは、知らず知らずのうちに、彼に重荷を背負わせすぎてしまったようです。 

    パーティリーダーの、重み。 

    それがどのようなものかはわかりません。 
    なにせ、リーダーになった経験がないもので。 
    それはきっと、ダクネスも同じでしょう。 

    彼だけが知り、彼だけが抱える、苦悩。 

    それは恐らく、想像を絶するものであり。 
    きっと、彼の背中には重すぎたのでしょう。 
    カズマの背中は大きくて広いと思ってました。 
    それはどうやら私の思い込みだったようです。 

    カズマ「俺は、クズマで、カスマなんだよ!」 

    今、蹲って咽び泣く、彼の背中はいつもよりも小さく見え、私はそうとも知らずにいつも甘えてその背に乗っていたのだと思うと、自分自身が許せなくて、とても不甲斐なくなりました。 

    めぐみん「……カズマッ! 」 

    居ても立っても居られず、彼を抱きしめます。

    24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 22:17:31.83 ID:DaHGsbQ60
    カズマ「……俺を嫌ってくれよ、めぐみん」 

    めぐみん「嫌えません。嫌いませんとも!」 

    カズマのお願いは即座に却下しました。 
    どうして嫌えましょうか。むしろ逆効果です。 
    もっともっと、好きになってしまいました。 

    ダクネス「お前は、馬鹿な奴だ」 

    不意に、耳元でダクネスの声が。 
    私たちをまとめて抱えるような抱き方。 
    それはまるで兄妹を抱きしめる母親のようで。 

    カズマ「……ママ」 

    ダクネス「だ、誰がママだ!? こう見えても私はまだ男と付き合ったことすらないのに!!」 

    思わずそう呟いた気持ちは私にもわかります。 
    ですが非常に気持ち悪いですね。キモいです。 
    でも、そんなキモさが、カズマらしさでした。 
    ずっこけて、格好悪いからこそ、素敵だと感じて、好きだと思える男は他にいないでしょう。 

    やはり、カズマはこうでなくてはなりません。 

    めぐみん「ちなみに計画の発案者は誰ですか? まあ、言わなくともなんとなくわかりますが」 

    カズマ「アクアだよ」 

    ダクネス「あいつめ。あとでお仕置きだ」 

    やはり、そうでしたか。予想はしてました。 
    どうにもらしくないとは思っていたのですが、全てはアクアの手のひらの上だったようです。 
    まるでどこぞの女神のような采配ぷりですね。 

    大方、カズマの苦悩を見透かして、救いの手を差し伸べたつもりなのでしょうが、余計なことをしてくれたものです。困った女神様ですね。 

    とはいえ、そのおかげで彼の意外な脆さという一面に触れることができました。僥倖です。 
    普段は飄々としているカズマの素顔が見れたことについては、あの女神様に感謝しましょう。

    25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 22:19:53.58 ID:DaHGsbQ60
    ダクネス「さあ、帰ろう、カズマ」 

    カズマ「ママ、おんぶ」 

    ダクネス「だからママと呼ぶなっ!?」 

    すっかりいつもの調子を取り戻して。 
    ダクネスの背中におんぶされるカズマ。 
    たまにはこうして甘えればいいのです。 

    時に背負い、時には背負わされ、いつもお互いの重荷を背負い合うのが、仲間なのですから。 

    とはいえ、私には難しいですね。 
    体格的な不利だけはどうにもなりません。 
    このままではダクネスの独壇場です。 
    これは由々しき事態ですね。私は悩みます。 
    この状況で自分に出来ることを、考えて。 

    そして、素晴らしい名案を、閃きました。 

    めぐみん「カズマカズマ」 

    カズマ「ん? どうかしたのか?」 

    めぐみん「ちょっと耳を貸してください」 

    ダクネスに聞かれないように小声で囁きます。 

    めぐみん「今度一緒に連れションしましょう」 

    カズマ「ぶっふぉっ!? げっふぉっ!?」 

    ダクネス「な、なんだ!? 私には全然聞こえなかったが、めぐみんはなんて言ったんだ!?」 

    めぐみん「内緒です」 

    あまりの驚きで盛大にむせたカズマ。 
    ダクネスはどうにも気になるみたいです。 
    しつこく追求されましたが、教えません。 

    普段冷静沈着な私とて照れる時はあるのです。



    26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 22:22:21.43 ID:DaHGsbQ60
    それから暫くのんびりとゆっくり帰路を歩き。 
    ようやく、私たちの屋敷が見えて来ました。 
    玄関の前で、アクアがウロウロしています。 
    どうやら、我々を心配しているようですね。 
    自分が計画した作戦の癖に、いざ実行に移してからやり過ぎだったかも知れないと不安になったのでしょう。なんともアクアらしいですね。 

    ダクネス「いいかアクア、次はないからな」 

    ダクネスも毒気を抜かれたのか、そこまで激怒することなく、げんこつ一発で済ませました。 

    アクア「全部カズマさんの為を思ってしたことなのに! あたしは何にも悪くないのにっ!!」 

    なんだかついさっき聞いたような言い訳。 
    しかし、どうやらこれは本気の叫びらしく。 
    自らの保身の為となるとなりふり構わない、この困ったちゃんが女神など、ありえませんね。 
    カズマにはこうならないで貰いたいものです。 
    そんなことを喚くのはアクアだけで充分です。 

    さて、それでは遅い朝食を食べるとしますか。 


    【この素晴らしい恋する乙女たちに祝福を!】 


    FIN

    27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 22:23:08.91 ID:DaHGsbQ60
    おまけ 

    めぐみん「私の目を見てください、カズマ」 

    カズマ「ミテルヨ?」 

    めぐみん「さっきから視線が下がってますよ」 

    どうも、めぐみんです。また会いましたね。 
    場面は変わって、手狭な個室に2人きり。 
    ここには私とカズマしか居ません。密室です。 
    すみませんが、もう一度名乗らせて頂きます。 
    我が名はめぐみん。約束は速やかに果たす女。 
    察しの良い方ならば、もうおわかりですね? 

    私たちは今、絶賛連れション中なのです。 

    めぐみん「不埒なことは許しませんからね」 

    カズマ「シナイヨ?」 

    めぐみん「では、さっきから私のお尻を撫で回しているこの悪い手は、誰のものでしょう?」 

    ひとまず現状を簡単に説明しますと、私は今、便座に座るカズマの膝の上に乗っています。 
    ちなみに下着は既に脱いでぽいしてますよ。 
    そんな私のお尻に対して直に忍び寄る魔の手。 
    それが誰のものなのかは言うまでもないです。 

    めぐみん「ひとまず、落ち着いてください」 

    カズマの頬に手を当てて、優しく撫でます。 
    このままでは連れションが出来ませんので。 
    彼が排尿できるようになるまで、待ちます。

    28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 22:25:15.11 ID:DaHGsbQ60
    めぐみん「落ち着きましたか?」 

    カズマ「ふぅ……ああ、もう大丈夫だ」 

    平常心を取り戻したカズマ。 
    まるで賢者のような空気を醸しています。 
    彼を鎮めるのは、それはそれは大変でした。 
    次回からはダクネスに任せるとしましょう。 

    めぐみん「では、さっそく」 

    カズマ「待ってくれ、めぐみん」 

    連れションに取り掛かろうとした矢先。 
    賢者となったカズマが待ったをかけました。 
    なんでしょう。私は小首を傾げて、尋ねます。 

    めぐみん「どうかしましたか?」 

    カズマ「これは多分、連れションではない」 

    この男は今更、何を言ってるのでしょうか。 
    どうやら、根本的な間違いがあるとのこと。 
    それならそうと早く言って欲しかったです。 

    めぐみん「どこが間違っているのですか?」 

    カズマ「全部だ」 

    めぐみん「具体的にお願いします」 

    カズマ「まず大前提として同じ便座を一緒に使うなんてことはありえない。どこの世界にそんな連れションがあるってんだ。たとえここが異世界であろうとも、俺はそんな連れションは認めないぞ。完全に変態プレイとしか思えない」

    29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 22:27:50.99 ID:DaHGsbQ60
    へ、変態プレイときましたか。衝撃的です。 
    これには流石の私も動揺を隠せません。 
    もちろん、私だってこれが普通ではないことくらいわかっていますとも。明らかに異常です。 
    でも、仕方ないではありませんか。だって。 

    めぐみん「なんと言われようと、私はどうしても、カズマと一緒におしっこがしたいのです」 

    彼がゆんゆんを連れションに誘ったあの日。 
    私はとてもショックでした。泣きそうでした。 
    だからこそ、思わずビンタまでしたわけで。 
    その後、事件の全貌が明らかになってからも、私の脳裏には連れションのことばかり過って。 

    めぐみん「カズマの初めてを奪いたいのです」 

    そう、詰まる所、それが根底にありました。 
    どんな変態プレイだろうと、初めてが欲しい。 
    いや、むしろ、そんな変態プレイだからこそ、初めては私として欲しいのかもしれませんね。 

    カズマ「めぐみんの気持ちはわかったよ」 

    めぐみん「それなら……」 

    カズマ「でも、俺にはそんな趣味はない」 

    そう言えば、そうでしたね。 
    この男は、こういう男でした。 
    ええ、知っていましたとも。 

    だから、事前に準備は整えておきました。

    30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 22:30:20.64 ID:DaHGsbQ60
    カズマ「というわけで、どいてくれ」 

    めぐみん「カズマ、キスをしましょう」 

    カズマ「話を聞こうじゃないか」 

    やはり、予想通りの反応ですね。 
    見ての通り、カズマは己の欲望に忠実な男。 
    そして実は、キスは未だに済ませていません。 
    どうしてか、そこを失念している人なのです。 
    だからこそ、必ず食いつくと思ってました。 

    カズマ「今しよう、すぐしよう、早くしよう」 

    めぐみん「がっつかないでくださいよ!」 

    危ない危ない。距離を取りましょう。 
    そう簡単にキスなどさせませんよ。 
    なにせ私にとっても初めてですしね。 

    めぐみん「まずは目を閉じてください」 

    カズマ「おいおい、そんな馬鹿なことをする奴が本当に居ると思ってるのか? 俺はつくづく思うね、キスの時に目を閉じる奴はアホだと。せっかく間近で好きな相手の顔を拝めるってのに、見ないとかないない。俺ならガン見……」 

    めぐみん「閉じないとキスしてあげません」 

    カズマ「よし、閉じたぞ! これでいいか!?」 

    本当に御し易い男ですね。チョロすぎます。 
    まあ、そういうところが可愛いのですけど。 
    なんて惚気はさておき。さあ、作戦開始です。

    31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 22:32:33.85 ID:DaHGsbQ60
    めぐみん「次はお口を開けてください」 

    カズマ「は? なんで?」 

    めぐみん「開けないとキスしませんよ?」 

    カズマ「あーん」 

    つくづく馬鹿な男です。完全に言いなりです。 
    何にせよ、これにて全ての用意は整いました。 
    あとは用意した錠剤を、ぽいと放り込めば。 

    カズマ「ん? なんか口に入れたか?」 

    めぐみん「きっと、気のせいですよ」 

    シュワっと溶けて、証拠は消え去りました。 
    あとは待つだけ。とはいえ、即効性です。 
    すぐにカズマの顔色がおかしくなりました。 

    カズマ「ぐあっ!?」 

    めぐみん「おや? どうかしましたか?」 

    カズマ「は、腹が……痛いんだけど……?」 

    めぐみん「フハッ!」 

    おっと、大変失礼しました。ごめんなさい。 
    私としたことが、つい愉悦を抑えきれずに。 
    はしたないですね。でもカズマが可愛くて。 
    ああ、なんて可哀想なカズマ。不憫です。 
    最初から協力的ならば苦しまずに済んだのに。 

    ウィズ魔法具店の下剤の効果は絶大ですね。 
    もっとも効きすぎる上に即効性が半端ない為、トイレ内でしか服用出来ない不良品ですが。 

    まあ、そんなことは、どうでもよいことです。 

    めぐみん「我慢は身体に毒ですよ、カズマ」 

    愉悦をひた隠して、私はカズマを労わります。



    32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 22:34:58.37 ID:DaHGsbQ60
    カズマ「め、めぐみん、お前……!」 

    めぐみん「安心して下さい。私が見届けます」 

    カズマ「は、始めから、このつもりで……?」 

    めぐみん「そんなこと今となってはどうでも良いではありませんか。早くぶちまけて下さい」 

    どうやらカズマは企みに気づいたようです。 
    歴戦の勇者の直感は伊達ではありませんね。 
    先程愉悦を漏らした際に敵感知スキルに引っかかってしまったようです。気をつけなければ。 

    めぐみん「私はあなたの仲間であり味方です」 

    あくまでも、自分は敵ではないとしながらも。 

    めぐみん「今のカズマはとっても魅力的です」 

    苦悶に喘ぐカズマを見て胸がドキドキします。 

    めぐみん「好きですよ、カズマ。大好きです」 

    便意を堪えるカズマは見ていて飽きません。 
    次は必ずダクネスにも見せてあげましょう。 
    きっと夜眠れなくなること間違いなしです。 
    無論、私も今宵は恐らく眠れないでしょう。 

    だってほら、そろそろカズマは、限界です。 

    カズマ「ぐうぅぅぅぅぅ……あっ」 

    ぶりゅっ! 

    めぐみん「フハッ!」 

    愉悦と同時に、噴き出す私の尿。漏れました。 
    それはカズマの股の間から便器へと滴ります。 
    さあ、愉しい愉しい連れションの始まりです。 
    カズマの首筋に頬を埋めて私も出し切ります。

    33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 22:36:48.74 ID:DaHGsbQ60
    カズマ「あ、あああ、ああああああっ………!」 

    ぶりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅっ!!!! 

    めぐみん「フハハハハハハハハハッ!!!!」 

    もはや、哄笑を止められません。気持ちいい。 
    狂ったように、嗤い続けて、悦に浸りました。 
    なるほど、変態プレイとはまさしくその通り。 
    ですが、この快楽を知らない人は可哀想です。 

    毛嫌いせずに、一度試してみては如何ですか? 

    カズマ「うぅ……ぐすんっ」 

    めぐみん「カズマ……泣いているのですか?」 

    カズマ「俺は、汚れちまった……!」 

    個室にさめざめと響く、カズマの啜り泣き。 
    どうやら、やり過ぎてしまったようですね。 
    彼に泣き止んで欲しくて私は抱きしめます。 

    めぐみん「大丈夫ですよ、カズマ」 

    カズマ「でも、俺はめぐみんの前で……!」 

    めぐみん「素敵でしたよ。惚れ直しました」 

    これは気休めではなく、本心からの言葉。 
    それが伝わったのか、泣き止んだカズマ。 
    私の胸に抱かれて、いつになく静かです。 
    もしかして寝てしまったのかと思ったら。 

    カズマ「隙あり! ドレインタッチ!」 

    めぐみん「あっ!」 

    一瞬の隙をつかれて、動けなくなりました。

    34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 22:39:38.04 ID:DaHGsbQ60
    めぐみん「くっ……身体に、力が入りません」 

    カズマ「俺は佐藤和真。最後に勝利を掴む者」 

    どうやら、彼の方が一枚上手だったようです。 
    生気を吸われて指一本たりとも動かせません。 
    完全に無防備な私に、彼はずいっと顔を寄せ。 

    カズマ「そういや、キスがまだだったな」 

    まだ覚えていましたか。これは困りました。 
    今の弱い私には抵抗することができません。 
    なす術なく、唇を奪われてしまうでしょう。 

    カズマ「覚悟はいいか、 めぐみん」 

    めぐみん「カズマ……優しくしてくださいね」 

    せめてもの足掻きとして、固く目を閉じます。 
    真っ暗な世界で全てが終わるのを待っていたのですが、待てども待てども何も起こりません。 
    さすがにおかしいと思って目を開けてみると。 

    カズマ「なんて、冗談に決まってるだろ。これに懲りたら、もう二度と悪ふざけはするなよ」 

    などと、訳の分からないことを、ほざいて。 
    ドレインタッチで吸った生気を、返還して。 
    私を膝から降ろして、立ち去ろうとする彼。 

    カズマ「じゃあな、めぐみん。愉しかったよ」 

    おい。ここまでしておいてそれはないだろう。 

    めぐみん「……黒より黒く闇より深き漆黒に」 

    カズマ「おい、その詠唱はマジでやめろ!?」 

    我が名は、めぐみん。爆裂魔法を極めし者。 

    たとえ屋敷を全壊させたとしても、ぶっ放つ。 
    絶対にやめるものか。乙女心を傷つけられた。 
    思わせぶりな態度は本当にやめてほしいです。 
    とはいえ、私も人のことは言えませんけどね。 
    それでも、これだけは言わせて貰いましょう。 

    私の好きな人は、ヘタレなのがたまに傷です。 


    【この素晴らしいトイレで連れションを!】 


    FIN

    37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/22(日) 01:38:34.21 ID:1dCkIYB+0
    すげー面白かった乙


    元スレ:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1532175695/


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